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2024年11月8日
日本金銭機械株式会社
(証券コード:6418)
日本金銭機械株式会社(本社:大阪市浪速区 代表取締役社長:上東洋次郎)は、2024年10月17日、18日に東京都新宿区で開催された第39回日本整形外科学会基礎学術集会※において、京都大学医学研究科運動器機能再建学講座の坂本昭夫特定准教授との共同研究成果を発表したことをお知らせいたします。
現在、当社は京都大学医学研究科運動器機能再建学講座の坂本昭夫特定准教授と、AI技術を用いた骨腫瘍画像診断支援の開発に関する共同研究を進めております。今回の発表では、骨腫瘍※1画像診断支援における希少症例である骨腫瘍のひとつの骨軟骨腫※2に対する課題の研究成果を発表いたしました。研究成果として、各課題に対する技術的な解決手法をそれぞれ検討し、以下の手法を用いることで、骨軟骨腫の検出精度の向上を確認しました。
①独自アルゴリズム(変換条件を備えたcGAN※3)による高解像度で多様な画像生成
②独自アノテーションツールの開発
③正常な膝関節データのみで学習させる「ワンクラス分類※4」の導入
※1.骨腫瘍:骨にできる腫瘍の総称で、悪性腫瘍と良性腫瘍があります。
※2.骨軟骨腫:本来と異なる部位に正常骨髄と連続した骨・軟骨が形成される良性骨腫瘍のひとつで、おもに成長期の疾患です。骨の外側に向かって増殖することから「外骨腫」とも呼ばれます。
※3.cGAN:通常のGAN(Generative Adversarial Networks)では、ランダムノイズを入力としてデータセットに似た新しいデータを生成しますが、cGANでは、特定のラベルや条件を付与することで、その条件に基づいたデータを生成することが可能です。これにより、生成されるデータに制約をかけて、特定のカテゴリや特徴を持つ画像やデータを生成することができます。GANとは、2つのニューラルネットワーク(脳の神経回路を模倣したコンピュータアルゴリズム)を競争させることで、新しいデータを生成する機械学習モデルです。一方のネットワーク(生成器)が新しいデータを生成し、もう一方のネットワーク(識別器)がそのデータが実際のデータか生成データかを識別します。この競争を通じて、生成器はより本物に近いデータを生成するように学習し、識別器はより精度高く偽物を見抜けるように学習します。最終的に、GANは実在するデータに非常に似た新しいデータを生成できるようになります。
※4.ワンクラス分類:一つのクラスのデータだけで領域を定義し、その領域内にあるデータとその領域外にあるデータで分類する方法で、特に異常検知などで利用されます。
課題①:多様な骨のデータとその品質の確保
正常な膝関節データの多様性や品質がモデル学習に使用可能な水準に満たない課題に対し、独自アルゴリズムを利用した画像生成により、多様な膝レントゲン画像を確保し、データセットの拡大を図りました。
課題②:ラベリング・コスト
セグメンテーションに用いた手動でのラベリングに時間を多く要することから、独自のアノテーションツールを開発することで、90%の時間削減を実現しました。
課題③:症例データの不足
骨軟骨腫は希少症例であることから、症例データが不足している課題に対し、ワンクラス分類(正常/異常判定)による正常な膝関節データのみで学習する手法を採用しました。
実験過程において、ワンクラス分類の境界線付近に不確定な領域が生まれたことから、一部の学習データが不足している課題が明確化されました。
この不確定領域を補完するための正常な膝関節データを新たに生成し、学習データに追加することで、不確定な領域が無くなったことから、画像判定における精度の改善を確認しました。
これらの実験結果として、ワンクラス分類を用いたAIモデルに膝関節データを入力すると、正常な膝関節データは「異常なし」と正しく判定し、骨軟骨腫のデータは「異常あり」として異常領域を正しく検知することを確認しました。
今後、この研究成果を骨軟骨腫以外の骨腫瘍にも適用し、骨腫瘍画像診断支援における可能性を検討してまいります。引き続き、当社は経営方針においてミッションとして掲げている貨幣処理機器分野で培った「コアテクノロジーを革新させ、新たな価値を創造し続ける」企業となるため、医療分野での貢献に向けた新しい取り組みに挑戦してまいります。
【日本金銭機械株式会社について】
当社は、カジノ業界での貨幣処理機器のパイオニアとして世界シェアNo.1を誇り、世界に認められた識鑑別技術を用いて、世界中の様々な市場をターゲットに貨幣処理機器、金融関係機器、パチンコ/パチスロ市場向け機器およびソリューションの開発・製造・販売を行っております。
貨幣処理機器分野で培った「コアテクノロジーを革新させ、新たな価値を創造し続ける」企業となるため、医療領域を始めとする様々な領域での貢献に向けた新しい取り組みに挑戦しています。
【京都大学医学研究科運動器機能再建学講座 坂本昭夫特定准教授について】
坂本昭夫 (さかもと あきお)
2023年 京都大学大学院医学研究科 運動器機能再建学 (特定准教授)
2016年 京都大学大学院医学研究科 整形外科(講師)
2012年 九州大学医学部附属病院 整形外科(助教)
2002年 NIH留学 (日本学術振興会 海外特別研究員)
2001年 九州大学医学部附属病院 整形外科(助手)
1994年 九州大学医学部卒業
骨軟部腫瘍の臨床に携わり、これまでに様々な臨床及び研究を実施。また、画像診断の知識と経験を人工知能への応用に活かす可能性を模索、特に骨腫瘍の基本的な画像診断手法であるレントゲン画像に注目されています。
■IRに関するお問合せ先
日本金銭機械株式会社 経営企画本部 広報・IR担当
TEL :06-6643-8400
MAIL:ir@jcm-hq.co.jp